ファンファーレに想いを乗せて
「ありがとな」
「ん?」
そう聞けば、頭を掻いて彼はグラウンドに目を向けた。
「あ〜、でも、やっぱ悔しいかな。うん。
全力出してもさ、勝てなかったって頭では分かってるけどさ。最後だったんだなって思ったら、やっぱ、な?」
噛み締めるように吐き出された言葉には重みがあって、簡単に同意の「うん」が言えはしない。
今の彼には同意も慰めも何も必要なんてないんだろう。
だからこそ、私が伝えることはただ一つ。
「加藤」
「ん?」
グラウンドにやっていた視線を私に戻す。
「お疲れさま」
「……うん」
「格好よかったよ、加藤。うん、輝いてた」
一生懸命な姿、ちゃんと目に焼き付けたよ。