ファンファーレに想いを乗せて
「あの、さ、」
「加藤先輩〜!」
彼が真っ直ぐ見つめて、何かを言いかけた時、大きな声で彼を呼びながらグラウンドに向かって駆けてきた人が1人。
加藤の彼女、伊藤玲花だ。
「じゃ、私、行くね」
彼に背を向け、その場を離れようとした。
もう、自分の気持ちをちゃんと伝えたから満足。
「ちょっ!待ってっ」
ぐっと手首を捕まれ、反射的に彼の方を振り向いた。
「あの、さ、……俺、」
そこから言葉が出てこないのは、どう言ったら私が傷つかなくて済むのか考えながら、言葉を選んでくれているからだらう。
そういう優しさも、全部、好きだったよ。