ファンファーレに想いを乗せて

分かってる。あなたには彼女がいるって。
だから、告白してもこうやって困らせるって分かってた。

だけど、言いたかったの。
返事なんていらない。
ただ、気持ちを知ってほしかっただけ。





「気にしないで」

だから、出てきた言葉はそんな言葉。


「ただ、言いたかっただけだから。だから気にしないで」


彼の緩んだ手からするりと手首を離し、今度こそ彼に背を向けて走り出した。



先ほどまで彼の温もりを感じていた手首は、まだ温かい。

校門を出て、じんじんと熱い手首を掴んで泣きそうになった。



これでいいんだ。

これで、いい


ちゃんとけじめつけたんだから、後悔なんて、していない。


なのに、変だな。涙出てきちゃう。


あぁ、そっか。

これが、失恋ってやつなのか。



いつか、この涙も懐かしいねって思い出すことができるのかな。



いつか、きっと

思い出になるだろう。



長かった片想いに、けじめをつけた日、やけに綺麗な夕焼け空だった。

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