ファンファーレに想いを乗せて
「甲子園かぁ」
ふと呟いた言葉と共に、彼の一生懸命な姿を思い出した。
バッターボックスに立っているブラウン管の中の選手に彼を重ね合わせていた。
真剣な眼差しで白球を追いかける彼の姿は、今でもはっきりと覚えている。
あの日、けじめをつけたはずなのに、それでも、やっぱりまだ好きで、彼を思い出にするにはまだまだ時間が必要みたい。
「はぁ」
溜め息を吐いた時、
「あず〜、テレビ観てるんなら手伝って」
雑巾片手に忙しそうに動き回っている母親が言うもんだから、
「今から勉強〜」
そう言って、二階の自分の部屋へと逃げた。
勉強しなきゃいけないのに、今は何もする気がしない。
今、彼は何をしているんだろう。
ふと、そんなことを思った時、ベッドの隅に置き去りになっていた携帯が着信を知らせる賑やかな音を立てた。