ファンファーレに想いを乗せて
「もしもし?」
「あっ、あずさ?」
「なんだ、絵里か」
「なんだとは何よ、失礼な」
「ごめん、ごめん」
でもね、今、無性に聞きたい声じゃなかったの。
無性に聞きたかったのは、あの人の声
彼が『あずさ』って呼ぶ声なんだ。
もう、そんな風に呼んでもらうことなんてないのにね
「もしもし?聞いてる?」
絵里の声にハッと我に返った。
「何?」
「もうっ!」
「ごめんって」
「今日、花火大会なんだからね!6時に迎え行くから」
「え?」
「ちゃんと浴衣着てくること。じゃ、あとでね」
「あっ、ちょっ、絵里?」