ファンファーレに想いを乗せて
「さんきゅな」
「ん?」
「昨日、見に来てたろ?」
「あ、うん」
何と声をかければいいんだろう。
残念だったねって言うべきなんだろうか。
お疲れさまって言うのがいいんだろうか。
ベンチ入り出来て、あんなに喜んでいた彼が、昨日の試合では出ることもなく負けてしまって、こんなとき、どんな言葉をかけていいか分からなくて、言葉が続かない。
「なんかさ、実感ないんだよな」
そう言った彼は、青い空を眺めていて、その言葉は、私にだけじゃなくて、自分自身にも言ってるようにも思えた。
「うん?」
「まぁ、試合に直接出てないってのが大きいのかもしれないんだけど、あの時間は、あっという間でさ、気付いたら終わってたって感じ」
「うん」
彼の言いたいこと、なんとなく分かる。