ファンファーレに想いを乗せて
「お〜いっ!加藤〜、鍵閉めるぞ〜!」
グラウンドの向こうの部室の前から、誰かが彼を呼んだ。
「やべっ!授業始まるしっ」
もうそんな時間?
慌てて腕時計を見ると、本鈴が鳴る二分前を指していた。
「うわっ!早く行かなきゃ」
制服に着替える為、部室へと行く彼と別れて校舎へと急ぐ。
早く学校に来ても、結局は走らなきゃいけないんだなと思ったら可笑しくて、だけど、こうやって朝から彼と話せたことが嬉しくて、走る足取りは軽く、校舎に向かっていたら、
「あずさっ」
彼の声が後ろから聞こえて振り返ると、
「パンツ、見えるし」
制服に着替えた彼が可笑しそうに笑ってやってきた。
咄嗟に鞄をお尻に当てると、
「冗談」
って言いながら、くくくっと可笑しそうに笑っていた。
「もうっ、変態」
「それ、褒め言葉?」
「んなわけないでしょ」
そんな彼とのやり取りが楽しくて仕方なかった。