ファンファーレに想いを乗せて
「ほらっ、これやるよ。飲みかけだけど、じゃ」

そう言って手に持っていたペットボトルをこちらに向かって投げると、グラウンドに引き返そうとしている彼に

「あっ、加藤っ!」

と、反射的に呼び止めた。

「ん?」

「練習、頑張ってね」

「おぅ!」


そう言って、いつも見せるキラキラした笑顔で返事をしてくれた。


「あと、これ、ありがとう」

受け取ったペットボトルを持ち上げた。


「おぅ、気を付けて帰れよ」

「うん。じゃ、また明日」

「また明日な」




彼との会話は、先ほどまでの気持ちを一掃してくれた。


「頑張って」

届くことない言葉を彼の背中に向かって呟くと、軽い足取りで校門をくぐった。

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