ファンファーレに想いを乗せて

それから数日後の昼休みのこと



「あずさ〜、古語辞典持ってないか?」

食堂から帰ってきた彼が、私のもとにやって来て、そう言った。


「ん?ちょっと待って」


机の中に入りきらないから鞄の中にしまっていたそれを取り出して彼に渡した。

「はい、これ」

「あのさ、これ貸してやってもいい?」

少し申し訳なさそうにそう言って廊下の方を見る彼の視線を辿ると、そこには、あの、マネージャーの姿があった。


「忘れて困ってるらしいんだよね」


どうして、ライバルであるあの子に貸してあげなきゃいけないんだって気持ちが強かったけれど、彼が申し訳なさそうに言うから断るに断れなくて、


「あ、うん。どうぞ」

と、言ってしまっていた。

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