ファンファーレに想いを乗せて


「久保田先輩!」

午後の授業が終わり、帰る準備をしていたら、廊下から私を呼ぶ可愛らしい声が聞こえた。


見ると、あのマネージャーが古語辞典を抱えて立っていた。


廊下に出ると、パッと表情を明るくして駆け寄ってきた彼女。


「あのっ!これ、本当に助かりました。ありがとうございました!」

ハキハキと言う彼女が、なんだか眩しかった。


この子は、嬉しい時は嬉しい。悲しい時は悲しい。楽しい時は楽しい。ときちんと体全部で表現するような、そんな子のように感じた。


私には、そういうの持ってないから。



初めて出会った時の嫌な印象は、目の前の彼女からは感じられなかった。

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