ファンファーレに想いを乗せて
「お願いしますっ!」
ショートのポジションから大きな声を出し、ノックを受けるその彼は、飛んでくる白球に何度でも何度でも食らい付く。
埃まみれで泥だらけの彼が、夕日に照らされた所為だけでなく、キラキラと輝いて見えた。
彼から目が離せなかった。彼に釘付けになっていた。ずっと、その彼だけを見ていた。
一人、また一人とグラウンドを去る中、彼は丁寧にグラウンド整備をし、最後に誰もいなくなったグラウンドに向かって
「ありがとうございましたっ!」
と大きな声で挨拶をして帰っていく彼の背中を見えなくなるまで見ていたんだ。