ファンファーレに想いを乗せて
彼に好きな人……
半年前の5月に聞いた噂を思い出す。
彼に好きな人がいるって聞いて、自分の気持ちを伝えずままに失恋した、あの時のことを。
それでも諦めきれなくて、ずっと片想いを続けてきてた。
仲良くなって距離が近付くにつれて、噂なんて忘れていた。
ううん
忘れていたんじゃなくて、頭の隅から消し去ろうとしていた。
噂はあくまで噂にすぎないんだから。
もしかしたら、あの噂は、嘘だったんじゃないかって、そう思おうとしている自分がいた。
「久保田先輩っ」
「……ん?」
彼女に名前を呼ばれて、我に返る。
そうして、彼女が先ほど言った言葉を反芻する。
そうして気付く。
そっか……
あの噂は、本当だったんだ
って。