ファンファーレに想いを乗せて
頭の中は、真っ白で、午後の授業内容なんて覚えていない。
頭の中では
「加藤先輩が好きな人は、青葉高の小泉さん」
そう言った彼女の声だけが壊れたレコードのように何度も何度も聞こえてくる。
耳を塞いでも、頭をふるふると横に振ってみても、その声は消えることはなかった。
そうして、迎えた放課後
「何があった?」
彼の練習する姿も見たくなくて足早に教室を出ようとしていた私の腕をぐいっと掴んで聞いてきたのは、絵里だった。
絵里に隠そうとしたけれどうまく誤魔化せなくて、正直に昼休みに彼女に聞いたことを話したら、
「でもさ、それってあの子のデマだって可能性だってあるわけでしょ」
元気出せ!というように肩をとんっと叩いて言ってくれた。
「……そうかな」
絵里はそう言うけれど、デマだとかそんなこと考える余裕がなくて、ただ、彼に好きな人が実際にいるんだっていう事実に、押しつぶされそうになっていた。