ファンファーレに想いを乗せて

「何?どうしたの?カオルちゃんに用でもあった?本人に代わろうか?……あれ?さっきまで近くにいたんだけどな、ちょっと待ってね」


小泉カオルを探しているであろうさっちんに、


「ああっ!いいっ!用も何もないからっ!ありがと。じゃあっ」



絵理から強引に携帯を奪い、一気に喋ると通話ボタンを切った。



彼女の声は聞きたくない。

精一杯なのに。

今でも精一杯強がって声出して、踏張って立っているのに、今、ここで彼女と電話口と言えども対面してしまったら、今の自分を保ってる自信がない。



「ありがと。帰るね」

無理やり笑顔を作って絵理に携帯を返し、教室を出ようとした時、


「あずさっ」

絵理の声に振り向いた。

< 89 / 224 >

この作品をシェア

pagetop