ファンファーレに想いを乗せて

再び、頭の中、彼のことでいっぱいになりそうになっていたら、



「今から授業出る?それとも今日は、このまま帰る?」

そう聞いてきた桜井くんに、先ほどの「どうする?」は授業のことだったのかと理解した。



「ん?出るよ、授業。けど今の時間はサボる」


「サボり魔」



先ほどまでの重い雰囲気を変えようと、笑ってそう言う桜井くんに、

「サボり魔じゃないし。久しぶりのサボりだしね」

そう言い返す。

「俺なんて、初サボりだし」

そう言う桜井くんが、教室に戻ろうとしないのは、私に付き合ってくれるらしい。
 
「先、行ってもらっていいよ」

「それ、冷たすぎ」

「そう?」

「そう。おかげで寒すぎて凍えそうだし」

「大袈裟」

ふっと笑った彼につられて笑みが零れた。

そんな私を見て、温かい眼差しをした彼は、きっと、私に笑ってる方がいいよと言ってるように思えて、その彼の優しさに、ふんわりと温かな気持ちになれた。

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