きみ、ふわり。


 電話の向こうで鼻をすする音がして、栗重はどうやら泣いているらしいと嫌でも気付く。


「お前、大丈夫?
 今どこ? そっち行こうか?」

 放っておく訳にもいかずそう言うと、

『いいって。大丈夫だから』

 また鼻をすすりながらも笑い混じりに答える。
 強がっているようにしか聞こえないのは俺の気のせいか?


「そっ、ならいんだけど。
 とにかくお前には関係ねぇから。
 無駄に神経すり減らすようなこと考えんなって。
 そのエネルギー、もっと他のことに有効に使え」

 冗談めかして返せば、栗重の乾いた笑い声が受話器越しに小さく聞こえた。



 電話を悠斗に手渡すと、

「そっかぁ、瀬那と栗重がねぇ」

 それを受け取りながら、お見通しとでも言わんばかりの自信満々な笑みを浮かべて言う。


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