きみ、ふわり。

「悪ぃけど、お前が期待してるようなことは一切ねぇから」

　当然のごとく否定。

　栗重に言った『いや、当分女はいいや』、これは俺の本心だった。
　というかもう、かつてのように気軽に女を抱けない。


　俺は紗恵と出会って――

　肌を重ねる『意味』を知ってしまった。


　今までしてきた事を悔やんだりはしない。
　美味しい想いをさせて貰ったと感謝こそすれ。

　ただ、知ってしまった、だからもう気安く肌を重ねることはできない、それだけだ。


　紗恵は俺の中に、漠然とした何かを残して、そして消えた。
　そう考えたら、きっと紗恵と出会ったこと自体に意味があったのだと思える。

　紗恵とのこの一か月は、俺にとってマイナスではなくプラスだった。
　そう思うことで、俺は幾分救われる。


　そう考え、そう思うしか――
　仕方ないだろう。

　なあ……


　紗恵。