きみ、ふわり。
俺のクラスは就職組がほとんどで、自由登校となった今、学校へ来るヤツなんて進学組のほんの一握り。
しかも、その極少数の進学組は図書室で勉強しているらしく、教室には誰もおらずガランと静まり返っていた。
10時と言われたのに俺は15分も前に着いてしまった。
もうどれが誰の席かわからなくて。
窓際の、カバンも何も置かれていない空席に適当に腰掛け、外の景色を眺めていた。
ハラハラとゆっくり舞い降りる白は、まるで重力に抵抗しているように映った。
結局は地に返って溶けるだけなのに、とか。
どうでもいいことを考えて時間を潰した。
カラカラと教室のスライドドアが滑る音が聞こえ、振り返れば栗重が教室の中へ一歩足を踏み入れたところだった。
「ごめん。
待たせちゃった?」
申し訳なさそうに苦笑しながら言い、栗重は後ろ手にドアを閉めた。