きみ、ふわり。
待ったのは、俺が早く来過ぎたせいだ。
「いや、時間通り」
と、いまいち噛み合っていない答えを返して俺は笑った。
室内と言えど、暖房も何もないから寒い。
栗重はダッフルコートを着たまま、肩に薄っすら積もった雪を交互に払い落とした。
俺も厚手のパーカーをブレザーの中に着たままだ。
どうでもいいことだけど、俺、コートは着ない主義。
栗重は俺が座っている席の隣の机に手提げ鞄をポサッと置いて、同時に椅子を引いてストンとその上に腰を落とした。
「元気そうで何より」
顔だけを俺に向け、困ったような苦笑を浮かべて栗重は言った。
「どかがだよ」
言った後、笑い声とも溜息ともつかない音が鼻から漏れた。