きみ、ふわり。


 俺の顔が栗重に包まれて、その柔らかい感触が妙に心地よくて目を閉じれば、真っ暗な世界に広がったのはあの河川敷の公園の景色。


 ――そして紗恵。

 ダンボールのソリに跨って、勢いよく堤防斜面を滑り降りる愉しそうな紗恵。

 俺の上にのっかったまま、ちっともどこうとしなかった紗恵。

 恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋める紗恵。



 ブチッと。
 何かが切れる音が聞こえた気がした。

 涙腺が決壊した音だったのかも知れない。


 目の奥が急にものすごく熱くなって、じんじんと痛む。
 瞼を閉じていても、次から次へと押し出されるように、そこに溜まったものは溢れだした。

 そうして、
 止まらなくなった。


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