きみ、ふわり。


「紗恵ちゃんも強かったけど……
 紗恵ちゃんの両親も強かった」



 俺もそう思う。
 紗恵は強い。

 最期の最期まで弱音も吐かず、凛として。

 けどその強さが逆に痛かった。
 余計に哀しかった。


 俺が傍に居て、不満や泣き言を聞いてやりたかった。
 掛ける言葉なんか、多分バカな俺には思いつかないだろうけど。

 それでも俺は傍に居たかった。

 気の利いた慰めも言えない自分をもどかしく思ったり、どうにもならない残酷な現実に激怒したり、絶望したり。
 そんな風に紗恵と一緒に苦しみたかった。


 全ては綺麗ごとなのだろうか。
 紗恵の苦しみを知らない俺は、やっぱり幸せなのだろうか。


 わからない、答えなんかないのかも知れない。


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