きみ、ふわり。


 それでもやっぱり、

 俺の中に美しい思い出だけを残した紗恵は――


 お前のその優しさは、強さは、
 俺にとって、




 あまりにも残酷だった。




「俺も紗恵みたいに強くなりたい」

 ボソボソと小さな独り言が俺の口から漏れ出た。

「瀬那くんは強いよ、偉いよ。
 カッコイイよ。素敵だよ」

 栗重はまた、綺麗な笑みを見せる。
 フッと。
 俺もつられて笑みが零れた。


「どこがだよ? ふざけんな。
 栗重メガネ」

 また幼稚な悪口を言って笑った。


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