きみ、ふわり。


「悠斗がお前のこと、『メガネ取ったら可愛い』っつってた。
 お前、あいつの視界の端っこには入ってるみたい」

「嘘吐くなっ!」

 栗重はぷぅっと、わざとらしく膨れて見せた。


「嘘じゃねぇって。
 でもまぁ、彼女一筋には変わりはねぇけど。
 お前なんかに希望は微塵もないけどね」

「わかってるよ、そんなこと。
 一々うるさい。
 てか、瀬那くんに言われたくない、なんかムカつく」

 などと言いながらも栗重は愉しげに笑う。


 俺も笑った。
 声はほとんど出なかったけど、頬が痛くなるぐらい笑った。



 紗恵……

 哀しみを笑い飛ばす強さをありがとう。




< 178 / 191 >

この作品をシェア

pagetop