きみ、ふわり。


 その後――


 俺は何を思ったのか医療系の道へ進もうと決めた。

 突然ひらめいた。
 理由もなく目的もなく。

 いや、目的はあったかな、良くわからない。


 リハビリテーション専門学校の二次募集に何とか引っ掛かり入学。
 三年後、市内の総合病院に理学療法士として就職した。




 そして気付けば三十路目前。

 俺はあれ以来、まともな恋を一つもできずにいる。


 紗恵を想うと切なくて、苦しくて。
 愛しくて、そして幸せで。

 忘れられない。忘れたくない。


 俺は一生、この優しい痛みと共に生きていく。


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