きみ、ふわり。


 今日も俺はいつも通り出勤。

 朝一の患者と病院敷地内の並木道を散歩していた。
 さぼっている訳じゃない、リハビリプログラムの一環として。

 桜の花びらがハラハラと舞い、時々緩やかな風が吹き抜けると、両サイドの木々はサワサワと薄桃色を揺らす。



「鏑木先生。
 私今日、先生にお手紙書いて来たよ」

 そう言って女性患者に手渡されたのは、角に桜の絵が描かれた、落ち着いた桃色の封筒。


「うわっ、ほんと?
 ありがとう」

 自然と頬が緩む。
 本当に嬉しい、だから、この仕事はやめられない。


「ラブレター」

 言って彼女はふふふ、と照れくさそうに笑った。

「まじっすか?」

 俺も笑う。


 と、

「瀬那くん、相変わらずモテモテだね」

 背後から懐かしい声が聞こえた。


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