きみ、ふわり。
振り返ればそこに、栗重みなみが立っていた。
一瞬、誰だかわからなかった。
まず、髪型が違う。
少し明るめの顎下ぐらいの短い髪が緩いウエーブを描いていて。
そしてさらに、トレードマークだったはずの茶色いフレームのメガネも掛けていなかった。
けど、綺麗に柔らかく笑うその顔は、あの頃の栗重そのままだった。
確かに。
メガネを取ると可愛い。
悠斗が正解、今頃気付いても仕方ないけど、とにかくお前、正解。
「当前です。
全ての女性患者が俺の恋人ですから」
ふざけて返せば、「まだそんなこと言ってんの?」と呆れた顔をする。
けれどすぐキラリと笑い、
「久しぶり」
と言った。