きみ、ふわり。


 うん、とだけ返して俺もまた笑った。


 陽の光を浴びた栗重の顔は、目がチカチカするほど眩しくて無意識に目を細めた。



「てか栗重、お前ここで何やってんの?」

「お隣にいる瀬那くんの恋人、私のお婆ちゃん」

「まじ? とよちゃん、そうなの?」

 隣でニコニコ笑っている“とよちゃん”を見下ろして確認すれば、「はい」と元気よく即答。

「世の中狭いねー」

 しみじみと呟けば、「瀬那くんがオッサンみたいな事言ってる」と栗重は肩を揺らして笑った。


「あれから10年以上も経ってんだ、オッサンになってなきゃ逆にイタイだろ?」

 冗談ぽく言って俺も笑った。
 けれど本心だ。

 あの頃と全く同じ俺じゃ、それこそ悲劇だ。


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