きみ、ふわり。


「ひょっとして……
 ひょっとしなくても、紗恵、俺が初めて?」

 直接的表現は避け、やんわりと確認する。

 が、腕の中の紗恵がたちまち泣きそうな顔をしたので、しまった、と思った。

 もっと他に言い様があったかも。
 きっと今の一言で、俺は紗恵を酷く傷付けた。



「ごめん。
 ごめん、紗恵」

 とにかく平謝りだ。
 それ以外にすべきことなど、俺には思いつかなかった。

 紗恵の瞳に透明の膜が張ったと思ったら、それはすぐに雫となってポロポロこぼれだした。


「紗恵、ごめん。
 ファーストキスも……
 ほんと、ごめん」

 言いながら、唇を親指でそっと拭うと、紗恵はその小さな顔をブンブンと左右に振った。


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