きみ、ふわり。
「え?」
っと。
無意識に間抜けな声が漏れた。
けれど紗恵は、
「私が処女じゃなかったら、抱いてくれますか?」
もう一度同じ言葉を、頑なな強い意志をのせて俺に向かって放った。
どうして……
どうして、紗恵がそんなにまでして俺に抱かれたいのか、さっぱりわからない。
『鏑木先輩、カッコいいからです』
たったそれだけで?
どうして? 何故?
疑問符ばかりが頭の中を渦巻く。
ゆっくりと起き上がりながら、紗恵の身体も抱き起した。
濡れた頬が余りにも悲痛に映り、両手でその頬を包み込むと、親指でそっと撫でた。