きみ、ふわり。
今手を離せば、彼女は粉々になって、崩れ落ちてしまうんじゃないだろうか。
俺が支えていなければ。
そんな、バカみたいな不安と使命感が、俺に中途半端なことをさせる。
何やってんだ、俺。
「だからこそ……
一大イベントだからこそ、先輩がいいんです」
細く弱々しい声だったが、俺は紗恵の瞳の中に、強く揺るぎない意志を見た。
「うん、気持ちは嬉しい。
ありがとな。
けど俺が……
まぁハッキリ言っちゃうと、俺は紗恵のこと、好きとかじゃねぇから。
ただヤリたかっただけなんだな、これ。
そんな感じで俺、最低なヤツだからさ、初めてを捧げる価値なんて微塵もないわけだ」
どうしてここまで、己の本音をさらけ出さなければならないのか。
もちろん不本意だ。