きみ、ふわり。


「いい、俺もう帰るもん」

 言って起き上がり、机から降り立つなり鞄を手にして肩に提げた。

 下校準備完了。


「何が『帰るも~ん』だ。
 吐き気倍増。胃薬ください」

 グチグチ文句を言う悠斗に一瞥くれてやり、「うぜぇわ」と一言で返した。
 そうして歩き出そうとすると、

「あの子と?」

 座ったまま俺の腕を押さえて引き留め、悠斗が問う。

 振り返って見下ろし、

「一人ですけど、それが何か?」

 冷ややかに答える。

 『あの子』とは紗恵のことだとすぐに気付き、即否定した。
 こいつが何を期待しているかなんて、透け透けの丸見えなんだよ。


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