きみ、ふわり。
「いいえ、大丈夫です」
腕の中から俺を見上げて満面の笑みで答える紗恵が輝いて見えた。
守ってあげなければという使命感に駆られるほどの『弱さ』の中、時々見え隠れする『強さ』が眩しい。
紗恵はスルリと俺の腕の中から抜け出した。
俺の両腕が、抱える対象を失ってふわりと落ちた。
背を向けて駆け出した紗恵を、思わず名を呼んで引き留めた。
立ち止まって振り返った紗恵に、「俺、ここで待ってるから」と伝えると、「はい」と、キラキラの笑顔で元気良く答えて再び駆け出した。
凛として、けれどどこか儚い、そんな背中が堪らなく愛しい。
ああ、とうとう自覚しちゃったわ。
俺、紗恵のことが――
好きだよね、きっと。