大好きだよ。
*美桜*
今日は、周ちゃんが海に連れて行ってくれる日。
悩んだ末に決めた黄色のワンピースを着て、
胸を踊らせて駅にやって来た。
そこには、いつもの笑顔。
・・・なんか、この顔見たら緊張がほどける。
人なつっこくて、細くなる目がすごく愛しい。
季節外れの海に行きたいって私のわがまま
周ちゃんはあっさり聞き入れてくれた。
とってもとっても、優しい人だね。
「てかさ、なんで海なの?」
電車の4人がけの席で、私の斜め前に座ってる尚哉くんは言った。
たしかに、当然の疑問だよね。
周ちゃんも・・・なんでって、思ったのかな。
「海はね・・・
私にとって特別な場所だから」
だから・・・周ちゃんと一緒に行きたかったんだ。
どこ行きたいか聞かれて、浮かんだんだ。
―海。
「ふ〜ん」
尚哉くんは、どう見ても腑に落ちないって顔してたけど
聞かない方がいいって思ってくれたのか、それ以上何も言わなかった。
やっぱり、周ちゃんの友達。
言いたくないだろうなって思ったら、絶対に聞いたりしない。
大人、って言うのかな。
「あっ海見えてきたよ」
私の隣の窓側に座った亜未が私に笑いかける。
「ほんとだ〜」
今日、いい天気でよかった。
海がきらきらしてる。
私の、大好きな風景。
ちらっと周ちゃんの方見たら、一瞬目が合った気がした。
・・・笑ってた?
優しい笑顔をしていたような気がして。
私はなんだか幸せになって。
周ちゃんがここにいてくれることを、感謝したくなったんだ。