もう一度だけでいい。



「夏真先生、来ましたけど何か」

いそいそと仕事をしていたやさおは急に声をかけられびくりと肩をはねさせた。

「おお、花ヶ嶺」

私のほうに顔を向けるとニコリと笑ってついて来いというように歩き出した。




連れてこられたのは小さな準備室。

「何するんですか」

机の上には大量に重ねられた書類が置いてある。

「体育祭の書類なんだけど、これを全部ホチキスで止めなきゃいけないんだ」

「いったい何冊作らなきゃいけないんですか?」

「うーん…、全校生徒分だから600冊くらい」

…二人でしたって一人当たり300冊。

「なんで楓矢よばなかったんですか…」

一人で十分って、ぜんぜん足りないから。

「狭いでしょ?この部屋」

確かに…。

部屋は6畳くらいの広さで真ん中には机、その側面にはソファーとで、二人でかなり窮屈だった。



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