スピカ
 熱が、出た。ほら、やっぱり。あんな薄着させるなんて、無茶だったんだ。
毎年の事ながら、露出させようとする男子も男子。許可を出す先生も先生。……着る方も、着る方か。

どおりで、昨日から頭が痛かったはずだ。泣いたから頭痛がしていたのだと思っていたのに。

蛍姉が言うには、あたしのクラスは飲食部門で賞を取ったらしい。きっと、いや、偏にちーちゃんの頑張りのお陰だ。
一緒に祝えなかったのが残念ではあるけれど、正直、それどころじゃなかったのだから仕方がない。次に学校へ行った時にでも祝ってあげよう。


瞼は重いくせに、意識がはっきりとしていて、変な気分。朝から、寝るか食べるか以外は何もしていないのだから、そりゃそうか。
眠気さえも尽きてしまい、目を閉じては今までの事が脳を荒らし回る。

口の中が熱に満たされ、吐き出した空気が重く沈んでいったような気がした。まるで今まで煙が肺に入っていたみたいだ。
自分自身にうんざりしてしまう。

と、鈍い音が部屋に響き渡った。ヴー、ヴー、と一定の長さの繰り返し。

音源はどうやら鞄の中だと気づき、鉛のような体をベッドから引きずり出した。
学校鞄の中。という事は、昨日から携帯を鞄に入れっ放しだったのか。

青白い光を映す画面を覗き込んだ途端、今度は沈んでいた肝が全部宙に浮いた気がした。


……洋君だ。

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