スピカ
第7章 孤独の星
 努力の甲斐あってか、高校生活最後のテストも無事終わり、暦は、師も走る12月に移り変わってしまった。
師走の風は冷たく、毎日が一瞬で過ぎてしまう。12月は1年の中で1番厄介な月だと思う。

亞未はと言うと、少しやつれてしまった。
悠成君とのゴタゴタもあるだうけど、概ねは、受験勉強から来るストレスのせいだ。
それでも、変わらず笑ったり出来るのは、亞未の強さがあるからだろう。
あたしに出来る事は、多分、ない。
せめて邪魔しないようにするのが、精一杯で。役に立つ事もないまま、嵐のような2学期は終わってしまった。

「な、何これ……」

零さんとばかりに目を見開く、母、満希。その原因は、1枚の紙にある。

「何って、成績表」

「雅……あんた、カンニングしたんじゃないでしょうね?」

最低だな、この母親。
熱い液体を口の中に含み、軽蔑の眼差しを送る。すると、お母さんは「冗談冗談」と苦笑いを浮かべた。

「それにしても、こんな成績は梢以来じゃないかしら。雅もやれば出来る子だったんだぁ」

「さぁね。あたしは梢姉ほど良い学校行ってないから分かんないけど」

それでも、この成績は努力の賜物だ。あたしの、陰の。
お母さんは、お父さんにも見せなきゃ、とか何とか言って喜んでいる。大袈裟だけれど、それが照れ臭くて、素直に喜べないあたしはやっぱりまだ子供だ。

「そういえば、どこか行くの? 今日、クリスマスイブでしょ」

「うん、帰って来るのは夜中かもしれないけど」

ふーん、と言う顔がいまいち不納得といった感じ。それもそうか。お母さんは、洋君の事をまだ知らないから。

あたしだって、クリスマスイブを洋君と過ごすだなんて、結構予想外だったかもしれない。ただ、予定がなかったから承諾したまでだ。しかも、誘われたのは昨日。
無論、用意なんかしていなくて、プレゼントは今から買いに行かなきゃならない。
洋君も、結構めちゃくちゃな人だ。

それでも、今年のクリスマスをあの優しい人と過ごせるのなら、めちゃくちゃも悪くはない。
< 128 / 232 >

この作品をシェア

pagetop