スピカ
「、ありがと……」

箱を受け取る手が、ついぎこちなくなってしまう。異変に気づかれてしまったのか、洋君は不思議そうに首を傾げた。

「……もっとでかいぬいぐるみとかの方が良かった?」

「へっ? いや、全然。嬉しいよ、うん」

嬉しいのは、嬉しいのだけど……、

「本当に?」

「うん。あ。あたしからも、コレ」

話を逸らすように、慌てて鞄からプレゼントを取り出す。占領していたそれがなくなり、鞄の中は急にスカスカになってしまった。
包み紙を手に取った洋君は、呆気に取られたような顔をしている。

「ありがと、」

「……何?」

「あ、いや。ほら、……誘ったのが昨日だったからさ、プレゼントとか用意してないだろうと思ってて……」

目を泳がせて慌てる仕種が、何だか女の子みたい。もう1度、「ありがとう」と繰り返すと、洋君は優しくはにかんだ。

「開けていい?」

「いいよ」

紙とビニールの音が公園に響く。包装を解いた洋君は、子供のように無邪気に笑い、

「手袋だ」

と。
さっき選んだばかりの、茶色の手袋。洋君の眼に似た、温かい茶色。

「ごめん、急いでたからそんなのしか買えなくて」

「おっ、すげー暖かい! 雅ちゃん、ありがとう!」

喜んでくれる顔に、こっちまで笑みが零れてしまう。
どうして、洋君はこんなにも柔らかく笑えるのだろう。それが不思議で仕方がない。
< 131 / 232 >

この作品をシェア

pagetop