スピカ
早速着けた手袋を外し、洋君は目配せをした。
「俺のも、開けてみて」
「あ、……うん」
返事をしたものの、何だか少し気まずい。だって、この大きさはどう見たって……指輪じゃないの。
ピンキーリングやお洒落リングならまだともかく、指輪なんて、貰えない。付き合っていない、しかも、好きかどうかも分からない人から。
亞未に言えば、きっと、今時固い考えだ、なんて笑われるかもしれないけど。あたしは、洋君に貢がせたい訳でもないし、彼氏になってほしい訳でもない。
薬指に嵌めるのは、本当に好きな人から貰った物がいい。
そう思うあたしは、贅沢なのだろうか。
喜びと不安が混ざり合い、複雑に脳を掻き乱す。
恐る恐る、箱を開けてみる。中で光るは、小さな2つの粒。
「……ピアス?」
うん、と照れ笑いを漏らすも、マフラーに顔を埋めてそれを隠そうとする洋君がどこか可愛い。
ホッとした胸が次第に温かくなっていく。銀のハートの真ん中には、小さな宝石が埋め込まれていて、正直を言うと、ハートとかそんな可愛らしいものはあたしの趣味じゃないのだけれど、直感で可愛い、と思ってしまった。
「可愛い……」
自然と零れたその言葉に、洋君は安堵の色を示す。
「良かったぁ。つけてみて」
言葉に従い、耳のピアスを1つ外す。
洋君のくれたピアスをその穴へ入れようとするけれども、上手く入らない。鏡があればすんなり入るけど、自分ではいまいち穴の位置が分からないのだ。
「貸してみ」
苦戦しているのを察してか、そう言った洋君にピアスを手渡す。触れ合った手が温かくて、そこで初めて自分の手が冷たかった事に気づいた。
薄暗がりの中、洋君の手と顔が近付く。少し冷えた耳に温もりが燈り、背筋がぞくりとした。
「よし、ついた」
「ありがとー……」
顔が、近い。視線のやり所に困るんだよ、こういうのって。
満足気に笑うと、洋君は「うん、可愛い」と付け足した。今、鏡で確認する訳にもいかず、あたしには似合うのか似合わないのさえ分からないのだけれど。
可愛い、ともう1度呟いた洋君の声は、もうさっきの優しい声じゃなくて。低い、響く声だった。
「俺のも、開けてみて」
「あ、……うん」
返事をしたものの、何だか少し気まずい。だって、この大きさはどう見たって……指輪じゃないの。
ピンキーリングやお洒落リングならまだともかく、指輪なんて、貰えない。付き合っていない、しかも、好きかどうかも分からない人から。
亞未に言えば、きっと、今時固い考えだ、なんて笑われるかもしれないけど。あたしは、洋君に貢がせたい訳でもないし、彼氏になってほしい訳でもない。
薬指に嵌めるのは、本当に好きな人から貰った物がいい。
そう思うあたしは、贅沢なのだろうか。
喜びと不安が混ざり合い、複雑に脳を掻き乱す。
恐る恐る、箱を開けてみる。中で光るは、小さな2つの粒。
「……ピアス?」
うん、と照れ笑いを漏らすも、マフラーに顔を埋めてそれを隠そうとする洋君がどこか可愛い。
ホッとした胸が次第に温かくなっていく。銀のハートの真ん中には、小さな宝石が埋め込まれていて、正直を言うと、ハートとかそんな可愛らしいものはあたしの趣味じゃないのだけれど、直感で可愛い、と思ってしまった。
「可愛い……」
自然と零れたその言葉に、洋君は安堵の色を示す。
「良かったぁ。つけてみて」
言葉に従い、耳のピアスを1つ外す。
洋君のくれたピアスをその穴へ入れようとするけれども、上手く入らない。鏡があればすんなり入るけど、自分ではいまいち穴の位置が分からないのだ。
「貸してみ」
苦戦しているのを察してか、そう言った洋君にピアスを手渡す。触れ合った手が温かくて、そこで初めて自分の手が冷たかった事に気づいた。
薄暗がりの中、洋君の手と顔が近付く。少し冷えた耳に温もりが燈り、背筋がぞくりとした。
「よし、ついた」
「ありがとー……」
顔が、近い。視線のやり所に困るんだよ、こういうのって。
満足気に笑うと、洋君は「うん、可愛い」と付け足した。今、鏡で確認する訳にもいかず、あたしには似合うのか似合わないのさえ分からないのだけれど。
可愛い、ともう1度呟いた洋君の声は、もうさっきの優しい声じゃなくて。低い、響く声だった。