スピカ
 一体、どうしてしまったのだろう。
良平の事なんて、最近はほとんど思い出さなかったのに。ダブって見えたなんて、最低だ……

洋君を傷付けた。傷付いた顔をしていた。

どうして今更。
どうして、あの時……


細い光が、ブラインドの隙間から幾つも差し込んでくる。
溶けそうなほど柔らかい光と小鳥の囀り。学生達が急いで階段を下りる音。
もう、朝なのか。……あんまり眠れなかった。

冬休み初日だって言うのに、いつもの朝よりも更に気怠い感じがする。重い体をベッドから這いずり出すと、冷たい空気が肌に触れ、思わず身震いしてしまった。

のそのそと部屋着のまま、階段を下りる。
珍しい事に、蛍姉が帰っているらしい。リビングから、話し声や笑い声が聞こえてくる。クリスマスなのに蛍姉がいるなんて、雪でも降るんじゃないだろうか。

「おはー……」

「あ、雅ちゃん。メリークリスマス!」

「……」

「あれ? なぁんか、まだ眠そうだなー」

いつもいつも本当にタイミングが悪いな、この男は。そっとしておいてくれたら良いのに。そう思うと、自然と溜め息が出た。
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