スピカ
なぜか、今、変な3人でこたつを囲んでいる。しかも、クリスマスの朝に。全くもって、可笑しな話だ。
残りのココアを喉に流し込むと、胸が熱くなっていくのが分かった。
「そういえば、てっちゃんは?」
「尾崎家」
蛍姉は視線を上げる事なく、「後で来る」と素っ気なく言い足した。
何をそんな一生懸命探しているのだろう。
ふと、蛍姉の手元にある広告を見て、全身の力がほんの一瞬抜けてしまったような気がした。
蛍姉が念入りに見ていたのは、アパートの広告だった。
「蛍姉、家出るの……?」
え?と、驚いたように蛍姉が顔を上げた。正面にいるあたしを捉え、猫のような目を更に丸くする。
「あ、ああ。うん、まぁね。言ってなかったっけ?」
「……」
「年が明けたらね、哲巳と2人暮らしするの」
何だよ……ソレ。そんなの、聞いてない。全然。
「あ、お父さんにはちゃんと許可貰ってるからね。雅もまた遊びにおいで」
「蛍ちゃん、俺はー?」
「楸君もね。はいはい」
幸せそうに笑っちゃってさ。
「何、不安そうな顔してんのよ。大丈夫、そんなに遠くに行ったりしないから」
そんな事、聞いてない。
そんな事、問題じゃないの。
「そっか、……ふぅん」
言葉が見当たらない。嬉しくもないし、悲しくもないから。ただただ、不安がじわりと染み渡っていく。
「蛍ちゃんがいなくなると、寂しくなるよね」
「楸君まで大袈裟だよ。どうせ今だって、あんまり家に帰って来てないんだし。大して変わんないよ」
苦笑いを零し、楸さんが様子を窺ってくるのが分かる。せっかく平然を装っているつもりが、バレてしまうじゃないか。
「あ、哲巳来たのかな?」
玄関の開く音を聞き、蛍姉が広告を纏め始めた。
いつものように気怠そうに腰を上げて席を立つ。彼氏が来たって言うのに。
纏めたにも関わらず、こたつ机の上は散らりしっ放し。神経質なあたしはいつもそれにイライラして、だらしない蛍姉の、その癖が大嫌いだった。
それが、今は切ないだなんて。
残りのココアを喉に流し込むと、胸が熱くなっていくのが分かった。
「そういえば、てっちゃんは?」
「尾崎家」
蛍姉は視線を上げる事なく、「後で来る」と素っ気なく言い足した。
何をそんな一生懸命探しているのだろう。
ふと、蛍姉の手元にある広告を見て、全身の力がほんの一瞬抜けてしまったような気がした。
蛍姉が念入りに見ていたのは、アパートの広告だった。
「蛍姉、家出るの……?」
え?と、驚いたように蛍姉が顔を上げた。正面にいるあたしを捉え、猫のような目を更に丸くする。
「あ、ああ。うん、まぁね。言ってなかったっけ?」
「……」
「年が明けたらね、哲巳と2人暮らしするの」
何だよ……ソレ。そんなの、聞いてない。全然。
「あ、お父さんにはちゃんと許可貰ってるからね。雅もまた遊びにおいで」
「蛍ちゃん、俺はー?」
「楸君もね。はいはい」
幸せそうに笑っちゃってさ。
「何、不安そうな顔してんのよ。大丈夫、そんなに遠くに行ったりしないから」
そんな事、聞いてない。
そんな事、問題じゃないの。
「そっか、……ふぅん」
言葉が見当たらない。嬉しくもないし、悲しくもないから。ただただ、不安がじわりと染み渡っていく。
「蛍ちゃんがいなくなると、寂しくなるよね」
「楸君まで大袈裟だよ。どうせ今だって、あんまり家に帰って来てないんだし。大して変わんないよ」
苦笑いを零し、楸さんが様子を窺ってくるのが分かる。せっかく平然を装っているつもりが、バレてしまうじゃないか。
「あ、哲巳来たのかな?」
玄関の開く音を聞き、蛍姉が広告を纏め始めた。
いつものように気怠そうに腰を上げて席を立つ。彼氏が来たって言うのに。
纏めたにも関わらず、こたつ机の上は散らりしっ放し。神経質なあたしはいつもそれにイライラして、だらしない蛍姉の、その癖が大嫌いだった。
それが、今は切ないだなんて。