スピカ
 寒い。物凄く。
当たり前か。部屋着で出て来ちゃったのだから。
12月をナメちゃいけない。凍りそうなほど風が冷たい。
冷たくて冷たくて、涙が出てしまいそう。

雲に覆われた空が、純白と言うには汚れた色をしている。灰と白の混ざったような、薄汚れた冬空。
時々漏れる陽光でさえも、弱くて、雲に飲み込まれてしまいそうだ。

「あんた、何してんの?」

門から入って来るお母さんが、如何にも不審そうな顔であたしを見ている。
それもそうか。いい年頃の娘が1人、空を見上げて突っ立っているのだから。

「そんな格好でどこ行くの? 見てるだけで寒いわね」

どこにも行く所なんてない。ただ、今は家に居たくないだけ。寂しさが増してしまいそうだから。

「どこだっていいじゃん」

「何よソレ。あんたまだ寝起きでしょ?」

うるさい。
放っておいてくれたらいいのに。
ギロリと睨むと、お母さんは驚いたように口を開いた。欝陶しくも罵声を浴びせられるのかと思ったけれど、

「あ、満希さんお帰りなさい」

それを遮るように後ろから声が。

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