スピカ
 容赦なし。
それがあたしのモットーだ。

ゲームって、結構性格が出ると思う。
例えば、てっちゃんは単純だからすぐに勝てる。あたしは容赦しない性格だし、ズバッとやっつけるタイプ。
お父さんは、案外曲者だ。あたしでも勝った事がない。


あと1発!

そう思った時、あたしの戦績はプツンと消えてしまった。真っ黒になった画面に、キョトンとした2人の顔が映る。

「あっ、ごめーん。コンセント、抜けちゃった!」

えへへと舌を出して笑う、中年の親父。あたしの、宿敵。

「この、クソ親父ぃー! えへへじゃねぇよ! 消えたじゃんっ!」

「いやぁ、ごめんごめん。わざとじゃないんだよぉ」

可愛く謝る父、秀央。52歳。
今日はいつもに増して髪の毛が散らかっている。

あたしはイライラしながらお父さんを睨むのだけれども。

「おっちゃん、ナイス!」

てっちゃんには好都合だったみたいで、爽やか度100パーセントの笑みを浮かべている。

「じゃあ、もう1回したらいいじゃん。おじさん、3P使うからさ」

「なに勝手に参加してんだよ!
 てめぇ、わざとだろ! さっきの、絶対わざとだろ!」

てへ、なんてお茶目に躱してくる。
やっぱりこいつはただのハゲじゃない。

曲者だ。

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