スピカ
 貧乏神?
いやいや、そんな可愛いもんじゃない。最近では、貧乏神どころか疫病神のような気さえするくらいだ。
楸さんの顔を見ると、うんざりとイライラが混ざり合うんだ。
楸さんと話していると、本当にあたしもお父さんの遺伝子をしっかり受け取ってしまいそう。あたしはまだハゲたくない。

「ちょっと、マジで早く出ていってくれません? 迷惑だから」

イライラと視線を送る。
けれども、そんな事お構いなしに居座るのが疫病神の生態で。

「何でぇい。俺にも若者エキスを分けてくれよ」

「3つしか変わらんでしょうが」

楸さんは抱き枕に腕を回しては、ニタニタとあたしの動向を観察していた。
年下とはいえ、女の部屋に上がり込み、剰えベッドに座るとは、なんて図々しい。

軽い、その性格が嫌いだ。生理的に受け付けない。

「わぁ、雅ちゃんの匂いだ」

「変態。5秒以内に放さないと絞め殺しますよ」

ギロリと睨むと、楸さんは慌てて抱き枕を手放した。どうやらあたしの殺意が伝わったらしい。
それでも尚、楸さんは部屋から出て行く素振りを見せない。

はぁ、と深い溜め息が漏れた。

「てか、早く出てって下さい。
 犯されそう。叫びますよ」

「ひっ、ひど……! 俺が嫌がる女の子を襲うとでも?」

「襲うだろ、あんたは」

「襲わねぇよ!」

あっそ、と冷たい返事を返して、机に散らばった資料を纏めた。
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