スピカ
 これは、報いだ。
今までのあたしへ対する、報復。
他人を大切にしなかった罰だ。


いつもいつも、どうしてこうも、器用に生きられないのだろう。

どうして、人を上手く愛せないのだろう。


拒絶して、無い物ねだりをして。
手に入れるのさえも怖いくせに。


自分を大切にし過ぎて、結局、自分を苦しめた。その結果、ついてきた言葉が“軽い女”だなんて、笑わせる。

あたしはただ、裏切らない、変わらない愛が欲しかっただけなのに。


「……ごめん」

「謝るなよ。すぐ」

低い声でそう言うと、洋君は手で顔を覆った。男の、大きな手。何でも掴めそうなくらいに。

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