スピカ
「……話、聞いてたんですか」
我ながら無愛想な聞き方だ。尋ねたと言うよりも、呟いたと言った方が正しいのではないかと思う。
それでも、聞き漏らす事なく、声だけの返事が返って来る。
「アパートの前に男がいたから、本物のストーカーじゃないかと思って、ね」
「そんな訳ないじゃん」
「可愛い可愛い雅ちゃんが、刺されでもしたら困るでしょ」
だから、ストーカーじゃないって言ってるのに。
自分の盗み聞きを肯定化する楸さんは、何だか滑稽だ。それでも、どうも怒る気にはなれなかった。
こんな嘘八百のふざけた言い訳にも、温もりを感じてしまうあたしは、どうかしてしまったのかもしれない。
呆れ混じりの笑いを零すと、全身の力が一気に抜けてしまったような気がした。
と、同時に一筋の涙が頬を伝っていった。
たった、一筋。
訳が分からず戸惑っているあたしを見て、楸さんは、
「あーあ。泣いちゃった」
と。
「別に、泣いてない」
泣こうと思って泣いた訳じゃない。
堪える間もなく勝手に流れていったのだ。泣きたかったのなら、きっと、もっと前に泣いているはずなのだから。
我ながら無愛想な聞き方だ。尋ねたと言うよりも、呟いたと言った方が正しいのではないかと思う。
それでも、聞き漏らす事なく、声だけの返事が返って来る。
「アパートの前に男がいたから、本物のストーカーじゃないかと思って、ね」
「そんな訳ないじゃん」
「可愛い可愛い雅ちゃんが、刺されでもしたら困るでしょ」
だから、ストーカーじゃないって言ってるのに。
自分の盗み聞きを肯定化する楸さんは、何だか滑稽だ。それでも、どうも怒る気にはなれなかった。
こんな嘘八百のふざけた言い訳にも、温もりを感じてしまうあたしは、どうかしてしまったのかもしれない。
呆れ混じりの笑いを零すと、全身の力が一気に抜けてしまったような気がした。
と、同時に一筋の涙が頬を伝っていった。
たった、一筋。
訳が分からず戸惑っているあたしを見て、楸さんは、
「あーあ。泣いちゃった」
と。
「別に、泣いてない」
泣こうと思って泣いた訳じゃない。
堪える間もなく勝手に流れていったのだ。泣きたかったのなら、きっと、もっと前に泣いているはずなのだから。