スピカ

　ぐちゃぐちゃな机の上は、紙で溢れていてどこに何があるのか、あたしにもいまいち分からない。

「何ソレ？」

背後の声にびくりとした。
慌ててそれを伏せようとするも、時、既に遅し。いとも簡単に取り上げられてしまった。

「調理……専門学校？」

紙に吸い寄せられた眼が、何度も文字をなぞる。

香水の香りが、その横顔に気を取られていたあたしを我に戻した。

「かっ、返して！」

強引に資料を奪い返す。慌てて掴んだために少し皺が出来てしまったけど、いちいちそんな事を気にしていられない。
楸さんは驚いたような顔で、銃口を向けられたかのように小さく両手を挙げた。

「み、雅ちゃん、専門学校行くんだ……」

「だから何？」

「いや、別に」

しかと睨み付け、ふんと鼻を鳴らしてやった。
握り締めた資料を机の上の物と重ねる。色とりどりのはずが、何だか白黒みたい。


資料の下を整えようとした時、１枚のメモ用紙がはらりと床に落ちた。


しかも、運悪く楸さんの足元に。