スピカ
リビングから掃除機の音が騒々しく聞こえてくる。今日は日曜日だっていうのに、お父さんはどうやらいないみたいだ。なんてぼんやり考えながら騒音に近付くと、お母さんはさっきまでうるさく働かせていた機械をぴたりと止めた。
「あら、いつもより早起きね。どっか遊びに行くの?」
単に目が覚めただけなのに。いつもより早起き、だなんて、朝から皮肉な事を言う。
無愛想に「行かない」と返事をして、リビングを横切った。
台所に朝ご飯を見つけ、吸い寄せられるようにそこへ向かう。どんなに遅く起きてこようが、いつも朝ご飯を残しておいてくれる。少し前までは、蛍姉と2人分の皿が並んであったのに、今は1人分だ。
サランラップを剥がしてプチトマトを1粒摘むと、後ろから「こら」と声が飛んで来た。
「ちゃんと座って食べなさい。掃除機止めてあげるから」
口の中で弾けたトマトが、みずみずしく喉を潤していく。それだけで、もう、胃が何かに満たされたような錯覚に陥ってしまった。
完食出来る気はしないのだけれど、このまま摘み食いをしていると口うるさく言われる事は目に見えている。後ろの視線を煩わしく思いながら、渋々皿をテーブルに移動させた。
「寒……」
通り抜ける朝風に、鳥肌が立つ。こんな風通しの良い、寒い所にじっと座らなきゃならないなんて。こんな時間に起きてきた事を、意識の隅で後悔した。
「あら、いつもより早起きね。どっか遊びに行くの?」
単に目が覚めただけなのに。いつもより早起き、だなんて、朝から皮肉な事を言う。
無愛想に「行かない」と返事をして、リビングを横切った。
台所に朝ご飯を見つけ、吸い寄せられるようにそこへ向かう。どんなに遅く起きてこようが、いつも朝ご飯を残しておいてくれる。少し前までは、蛍姉と2人分の皿が並んであったのに、今は1人分だ。
サランラップを剥がしてプチトマトを1粒摘むと、後ろから「こら」と声が飛んで来た。
「ちゃんと座って食べなさい。掃除機止めてあげるから」
口の中で弾けたトマトが、みずみずしく喉を潤していく。それだけで、もう、胃が何かに満たされたような錯覚に陥ってしまった。
完食出来る気はしないのだけれど、このまま摘み食いをしていると口うるさく言われる事は目に見えている。後ろの視線を煩わしく思いながら、渋々皿をテーブルに移動させた。
「寒……」
通り抜ける朝風に、鳥肌が立つ。こんな風通しの良い、寒い所にじっと座らなきゃならないなんて。こんな時間に起きてきた事を、意識の隅で後悔した。