スピカ
「でも、そんなの別に見なくたって、楸さんが女連れ込んでるのは、いつもの事じゃないですか。3年も楸さんが女遊びしてるの見てきたんだし。現に今だって、」

「楸君、女の子連れ込んでないよ?」

「え……?」

「ここんとこ、女の影すら感じられないもん。俺が知ってる限りだから、多分だけどね。でも、サークルとか合コンにも全然顔出さなくなったらしいし」

曖昧に笑い、彼女でも出来たのかな、と森崎さんは首を捻った。

少し冷たい風が鼻を擽った。


……違う。
知ってるじゃないか、あたしは。思い上がりなんかじゃない。楸さんの言葉が、ただの冗談なんかじゃなかったって事。

今更知ったかのようなフリをして、……あたしは馬鹿か。

目を見て、本気だって分かっていたはずなのに。いつもみたいに、軽い気持ちで言っている訳じゃない事、気づいていたのに。

それなのに、跳ね退けたんだ。気づかないフリをして。


女好きだからって、いつも突き放して考えていた。あたしだけを見る事なんて、きっと、有り得もしないと思っていたから。


そうやって、どれほど楸さんを傷付けてきたのだろう。

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