スピカ
ひょいとメモを拾い上げ、楸さんは呆然とそこに書かれた文字を声に出した。
「良平……?」
そう、良平の番号とアドレスが書かれた紙だ。
付き合う前にしつこく渡されたもので。まさかこんな所に混ざっていたとは思わなかった。
「返して!」
無理矢理奪い返そうと手を伸ばす。
けれども、軽々と躱されてしまった。楸さんに同じ技は2度も通じないらしい。
現実は、ゲームとは違う。
楸さんは、無表情でじっと紙を見つめている。
「良平って?」
「は? 何で楸さんに言わなきゃなんないんですか」
目一杯獲物を睨みつける。
でも、まるで効果なし。
楸さんは怯みさえしない。
「誰?」
と、あたしに視線を流した。
強い、その黒い瞳が、嫌い。
目が合う事を、身体が自然と拒絶してしまう。
「……元彼」
どうして、元彼ごときでこんな気まずい空気にならなきゃならないのか、意味が分からない。いや、そんな空気を作ってるのはあたしの方か。
「捨てて」
「え、捨てていいの?」
「要らない」
そう吐き捨て、なるべく何事もなかったかのように専門学校の資料を寂しい本立てに立てかける。机にはまだ、成績表やら雑誌やらが散らかっていた。
「良平……?」
そう、良平の番号とアドレスが書かれた紙だ。
付き合う前にしつこく渡されたもので。まさかこんな所に混ざっていたとは思わなかった。
「返して!」
無理矢理奪い返そうと手を伸ばす。
けれども、軽々と躱されてしまった。楸さんに同じ技は2度も通じないらしい。
現実は、ゲームとは違う。
楸さんは、無表情でじっと紙を見つめている。
「良平って?」
「は? 何で楸さんに言わなきゃなんないんですか」
目一杯獲物を睨みつける。
でも、まるで効果なし。
楸さんは怯みさえしない。
「誰?」
と、あたしに視線を流した。
強い、その黒い瞳が、嫌い。
目が合う事を、身体が自然と拒絶してしまう。
「……元彼」
どうして、元彼ごときでこんな気まずい空気にならなきゃならないのか、意味が分からない。いや、そんな空気を作ってるのはあたしの方か。
「捨てて」
「え、捨てていいの?」
「要らない」
そう吐き捨て、なるべく何事もなかったかのように専門学校の資料を寂しい本立てに立てかける。机にはまだ、成績表やら雑誌やらが散らかっていた。