スピカ
 あたしの予想は外れだったみたいだ。

今宵は、星月夜らしい。

どこにも、月が見当たらない。月は、あたしの事がどうやらお嫌いみたいで。空を見上げる時はいつも、姿を見せてくれない。だけど、その代わりみたいに、星の光がキラキラと夜空に浮かんでいた。
雲1つない夜空がやけに大きく感じる。暗い空に、瞳が吸い込まれてしまいそうだ。

きっと、世界中が停電したら、もっと綺麗に星が見えるだろうに。


今まで、あたしはまだ、本当に凄いものに出会っていないかもしれない。たかが18年の人生なのだから。

でも、美しいものはちゃんと知っている。意識しなくとも、直感的に分かる。


ああ、なんて美しい。

もし、この世に夜空や星がなかったとしたら、あたしの心は、もっと冷たく廃れたものになっていただろう。この優しい光を浴びられないのなら、きっと、枯れてしまっていた。


夜空には、3つの星が並んでいる。あれくらいあたしだって分かる。オリオン座だ。


それがあまりに綺麗過ぎて、泣き出しそうになった。
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